八ヶ岳(赤岳) 冬山合宿
【日 時】 2月16日(木)〜19日(日)
【天 候】 2月16日(曇り)、17日(朝方晴午後曇り)、18日(強風・曇り)、19日(晴れ)
【参加者】 山下(L)、村田(SL)、石田(忠)、西村、西内、松田
 

計6名

【コース】 16日(木) 21:30四条大宮・22:00京阪五条〜名神・中央高速〜02:10諏訪パーキング仮眠
17日(金) 07:00諏訪パーキング出発〜07:45美濃戸口〜08:20美濃戸山荘〜10:50赤岳鉱泉
18日(土)05:30起床〜07:50赤岳鉱泉出発〜08:30行者小屋〜10:00文三郎出合〜11:05岩稜
               取り付き口〜12:10文三郎下樹林(行動食)〜12:30行者小屋〜13:00赤岳鉱泉
19日(日)06:00起床〜08:00赤岳鉱泉出発〜08:30中山展望〜09:00行者小屋〜10:25南沢崩
             落地〜10:50美濃戸山荘13:00諏訪サービスエリア〜中央・名神〜17:30京阪五条
【報 告】
                                     

                            
2月16日(木) 
四条大宮、京阪五条に分かれて集合、2台に分乗して名神・多賀で落ち合う。今年は雪もなく静かな旅立ちです。駒ヶ岳パーキングで一休みして一気に諏訪パーキングへ2時過ぎに到着。全員用意したシュラフに潜って仮眠を取る。
2月17日(金) 
朝6時、冷え込んだ車内で目を覚ましサービスエリアで暖かい食事を取って7時に出発。美濃戸口には7時40分頃到着。新雪もなく雪が締まっていることから美濃戸山荘まで車を乗り入れることにした。歩けば1時間は掛かる距離だが車で行けば10分ほどだ。美濃戸口から急坂を慎重に登り美濃戸山荘には8時前に到着。ここまで車で乗り入れれば後はしれた距離です。平日のためか駐車場は1台も止まっていない、私達2台が週末初めてのお客でした。駐車場で身支度を調えて北沢に入る。1月初級で歩いた沢道は雪が随分と付いて様変わりして冬道らしくなっていた。赤岳鉱泉小屋までは堰堤手前と堰堤、そして小屋手前の3回休憩を取りのんびりと冬道を楽しむ。赤岳鉱泉小屋には11時頃到着。小屋はひっそりとして入口で「こんにちは〜」と大きな声を掛けて初めて小屋の方に迎えて頂いた。今日の泊まりは私達を含めて15人程度。しかし、明日の土曜日は200人を越すとのこと、赤岳鉱泉小屋の人気が知れる。時間も早いので硫黄でも登りましょうかと提案しても誰一人として頷かず、一気に部屋に入り缶ビールで入山祝いをやって軽くお昼寝。「夕食です」と声を掛けられて食堂で舌鼓を打ち部屋に戻りしばし宴を楽しんで9時就寝。
                                            

2月18日(土)
 今日の200人のお客は午後到着予定、静かな食堂で朝食を取り7時50分小屋を後にして赤岳にアタックです。小屋の外でアイゼンを装着、外気温を確認すると−20℃。手先がジンジン痺れて痛い。顔は目出帽で被っているが頬の部分が出ているせいか冷たい空気にさらされて痛いです。冷たい空気を吸っているので呼吸も浅く感じられます。ビーコンチェックをして行者小屋目指して歩き出す。冷え込んでいるためアイゼンが良く効きます。キュッキュッと雪を踏みしめる音が心地よい。中山乗越手前で緊張と超低温のせいか松田さんが浅い呼吸となってしばし休憩。行者小屋に着くと今度は西内さんが超低温に少し不安を覚える。松田、西内、村田はこの超低温は初めての経験なのか緊張気味のため行者小屋前で少し時間を取って緊張を和らげる。赤岳を望むと雪煙が舞っている、文三郎尾根では強風が吹いていると思われた。行者小屋を後にして尾根筋の樹林に入る。トレースの左右は見事な樹氷が続いてしばし冷たさを忘れた。樹林をぬけてS字の尾根に入る。夏道は鎖が張られて階段が見えるところは雪に埋もれて鎖の頭だけが覗いていた。一歩一歩、キックステップを使ってアイゼンを蹴り込んで慎重に登る。左右は切れ落ちて横岳方面から風が吹き荒れバランスを崩さないようピッケルを差し込んで登る。角度のある坂道は風で雪が飛んでアイスバーン状態。強く蹴り込まないとアイゼンが効かない。尾根も階段状で少し緩やかになると昨夜降った新雪のせいで滑ることは無かった。S字の尾根を登り切ると稜線出会いまで登りのトラバースが待っていた。右下が谷に落ち込んでいる。トレースも片足を乗せる程度の道幅しかない、左足は進行方向に右足は谷に目がけて落とし込んでピッケルを左手に持ち替えてここでもバランスを取りながら慎重に歩く。風が左の頬を強く打ち付ける。ピッケルを長く持っている左手が痺れて痛い。ここをもう一度折り返して降りるのかと思うと下山が不安になる。稜線出合いに付くと今まで以上に風が強く感じられた。しかし、稜線から岩稜取り付けまで行けば風の通り道の裏側になるので少しは収まるだろうと思いジグザグ道を取り付き付近目指して歩く。風の勢いが益々強くなってくる。気温が低いせいか向かい風をまともに受けると雪の一粒一粒が小石のように顔に当たり泣きたくなるほど痛い。風に背を向けると首筋が一気に氷付く感じ。早くこの稜線を抜けたいと岩稜取り付き付近まで必死に歩くが風は益々激しくなり止む気配が無い。下山に際しての体力を残さなければ思い始める。不安な気持ちで岩稜取り付けに到着した際、私から「あと少しで頂上ですが強風と低温で下山に不安を覚えるので申し訳ないですが撤退したい」とメンバーに話しかけた。ベテラン二人はそこに頂上が見えているので歯ぎしりを噛んでいたがやむを得ないと了解頂き、他のメンバーも撤退に同意して頂いた。顔を上げると岩稜に氷が取り付き雪で白く化粧をしてゴツゴツした瘤で偽装した氷の殿堂に圧倒された。もう、そこを曲がれば頂上が見えてくると思うと無性に上がりたかったが今まで経験したことがない強風と低温のため止む無く下山。先ほど登ったジグザグコースを出合いに向けてとって返し直ぐさま下降のトラバースに入る。下山は左手が谷筋、風は向かい風。左足を谷に向けて踏ん張り坂道を降りる。意外と登りに比べて早く通過することが出来た。次はS字尾根の下降。フラットにアイゼンを降ろし腰と膝を落とし込んで目線を上げてゆっくり降りる。膝に体重が掛かり苦しい。時折、体重が後ろに掛かりアイゼンが滑るのをひたすら耐えて降りる。時にバックステップを切って急な傾斜を忍んでひたすら下降。登りに比べてなんと下山の早かったこと。岩稜取り付きから文三郎尾根の樹林までわずか1時間で降りてきた。樹林に入ったことで風が止みホット一息、急におなかがすいて行動食を取る。ちょうど腕時計は12時を差していた。村田さんに暖かいスープをご馳走になりドーナッツをお腹に入れると嘘のように体力・気力が回復。メンバー一同、顔色も良くなり話が弾んで笑い声が出てきた。行動食で元気を取り戻して再び下山に掛かる。樹林帯を抜けて行者小屋から中山乗越を越えて赤岳鉱泉小屋まで一気に下る。登りの時のようなは足のもつれは無かった。小屋には1時過ぎに着く。稜線に比べると小屋付近は暖かく感じるがそれでもマイナスの世界だ。体が低温に慣れた生か気にならない。小屋は200人のお客さんが続々詰め掛けて賑わいを見せていた。昼間から暖房も入って暖かい。部屋に帰って着替えを済まし無事下山出来た事を喜んで再びビールで乾杯。部屋では終わりがない宴が始まり夕食を挟んで話に花が咲いた。今宵も就寝は9時でした。
                                             


2月19日(日)
 6時起床。カーテンを開けると外は青空が覗き硫黄岳の頂上が朝日に照らされて黄金色に輝いていた。昨日のあの寒気は何処へ行ったんだと叫びたくなるほど穏やかな日差しが照りつけていた。朝の食堂は200人の客でごった返していた。朝を早めに取って小屋にお礼を言って8時に出発。今日は中山展望台に入り行者小屋から南沢を廻って下山するコースを選んだ。今朝も放射冷却のためか外気温は−21
℃を差していた。しかし、昨日ほど寒さを感じない。中山展望台には40分程で着いた。周りは開けた小さな台地だが360度パノラマの世界を堪能できた。とりわけ阿弥陀岳が間近に迫り白く輝いて美しかった。昨日の赤岳は逆光をあびて黒く光っていた。赤岳から横岳に伸びる稜線と岩稜は白く化粧をした城壁のように覆い被さって「来るなら来い」と挑戦状をたたきつけられた思い。時間を忘れてパーティー全員が見とれていた。時間を忘れてそこに立っていたかったが20人ほどの団体が顔を出してきたので席を譲って帰路につく。行者小屋から南沢は雪に埋もれた川沿いに歩き、時に樹林に入って木漏れ日を浴びながら冬道らしい下山コースを楽しめた。美濃戸山荘には11時頃到着。アイゼンを外してザックに詰め直し、車の雪を払って一路懐かしの我が家に向かう。赤岳は昨年は雪崩、今年は超低温と強風で私達を歓迎してもらえ無かった。メンバーの一人から「来年の挑戦状をもらった」と早くも次の赤岳アタックを強く心に決めていた。諏訪サービスエリアから見た八ヶ岳は本当に青い空に白く輝いていました。来年、もう一度挑戦します。

 

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